世界のすべての七月〜総体として読む群像劇、個々の話としてもおもしろい
世界のすべての七月はティム・オブライエンの短編集めいた構成の長編小説です
複数の短編の主人公が同窓会で集まって青春を振り返るという設定はなかなかおもしろい着眼点で、それぞれの短編を読んでいくことで大きな一つの物語が浮かび上がる形になっています
1969年度の大学卒業生という設定で、登場人物の年齢は皆50代、感情移入しやすいかどうかと言えば感情移入しにくいと言わざるを得ません
しかし、年齢や世代を超えたある種のノスタルジーと、夢と現実の狭間の葛藤、選択に伴う苦痛などはいかにも青春小説的で、世代的な差異を感じさせない内容でした
作者の希望あるいは思い入れのようなものを感じさせるご都合主義的展開も時々あるのですが、それがまた一つのアクセントになっており爽やかに読み進めるためには必須とも感じられるのがおもしろいところです
例えば最終盤の群像劇として文章がひっちゃかめっちゃかになっていくところなどはテクニカルで読みにくいすが作者の思い入れみたいなものが感じられたからこそおもしろい場面だなと感じます
序盤は正直あまりおもしろいとは思わなかったのですが中盤以降(5番目の短編あたりから)は相当に楽しめました
総じて傑作といえる出来だと思います
ただ一つだけ気になったこと、「光年」は時間じゃなくて距離だ…!